DAI-SONの二次創作

二次創作の短編小説を載せていきたいと思います。

ブレイブソードxブレイズソウル 二次創作 「おるすばん」

ある日の酒場での出来事…
リディは退屈だった。
数々の酒場でのバイトも、なかば退屈凌ぎのためにやっている部分があった。
遊び盛りの子供であるリディにとって、マスターの居ない休日は果てしなく暇だった。
リディ「オルクリストの人形劇も飽きちゃったし、かといってグランギニョルには頼みたくないしなぁ~」
酒場のカウンターにあるブキダスのレバーをギコギコしていると、隣にセスタスが座ってきた。
セスタス「お隣、よろしくて?」
リディ「どーぞどーぞ」
バータイムではないので、カウンター先には誰も居ない。
セスタスはショートケーキを2つもっていて、1つをリディに渡した。
セスタス「いかが?」
リディ「うーん、太っちゃうなぁ」
セスタス「あら、要りませんの?」
リディ「いやいや、やっぱ食べる。バイトで動きまくればいいんだし。」
セスタス「では、どうぞ」
二人はフォークでショートケーキをつつく。
セスタス「やはり、せんせいがいないと賑やかさに欠けますわね。」
リディ「人騒がせなのと、賑やかなのはちがうもん!!暇さえあればセクハラ三昧だから、注意するこっちの気にもなってほしいよね!!」
セスタス「たしかにもう少し紳士的になってほしいですわね。でも、付きっきりで居る貴女も、なかなかの物好きですこと。」
リディ「そっ、そんなんじゃないったら。」
セスタス「ふふふ」
リディ「…でも、やっぱり居ないと退屈だなぁ…。」
セスタス「チェスでもいかが?」
リディ「えー、ルールわかんないよー」
そこで、リディの脳裏で電球が光る。
リディ「そうだ!!セスタスちゃんで遊べばいいんだ!!」
セスタス「ふぇ!!?」
リディはしゃがんでセスタスの足首を掴んだ。
リディ「さあ、軽くなるんだよ!!」
セスタスが術式を開放すると、セスタスの体は布のように軽くなる。
リディ「ちからもちごっこー!!」
セスタス「わたくしはつまらないですわ…。」
リディ「えー、わがままだなぁ~」
セスタス「そっくりそのまま返しますわ」
リディはセスタスを下ろすと、腕を組んでうーんと唸る。
リディ「このときのためのお楽しみがあったような…」
セスタス「お楽しみ…とは、なんですの?」
リディ「そーだ!アレ、出来上がってるかなぁ!!?」
リディは目をキラキラさせて走り出す。
セスタス「ま、待ってくださいまし!!」
セスタスも、それに付いていった。

セスタス「ここは…地下室…。」
リディ「そうだよ。謎の地下室。」
この酒場では、酒の醸造以外で地下室を使うことはあまりない。
魔剣の収納倉庫も地上にある。
盗まれるかと心配するだろうが、地下に収納して、万が一地下室が崩れてしまったときに、埋もれてしまう方が怖いのだ。
そんなわけで、酒蔵以外の部屋は、ほぼすべてが空き部屋となっているのだ。
目の前にある錆びかけた扉も、その中のひとつである。
鍵はかかっていないようだ。
リディ「こんにちはー」
リディが扉を開けたとたん、リディは後ろに吹っ飛ばされ、セスタス共々壁にぶつけられる。
二人「きゃあ!!」
???「お~っと失礼!!この私のザ・試作術式の実験最中だったのだ~!!」
???「あらら~。でも、無事みたいよ。怪我もしてないみたい。」
???「イェーイ!!」
???「イッツロジカル!!」
中から出てきたのは、オーガニクスとアルスマグナだった。
セスタス「ろじかる!!ではありませんわ!!まったく…」
セスタスは涙目で、服の土ぼこりを払う。
リディ「ところで、例のアレ、出来てる?」
オーガニクス「ハーッハッハ!!もちろん!!このマッドサイエンティーーーストにかかれば雑作もない!!」
アルスマグナ「ヤバくならないように私が監修したから、事故の心配はいらないわ。」
渡されたのは、三本のペンだった。
特徴は、それぞれの芯がルビー、サファイア、エメラルドで作られている事だった。
セスタス「これは何ですの?」
オーガニクス「それはぁ、私のパーーーフェクトな理論に基づきィ…」
アルスマグナ「オーガが説明すると長くなるから、ロジカルに説明するわね。それは、それぞれに対応している火風水(ひかみ)三属性の下級術式を書き起こせば、インスタントに使えるマジックアイテムなの。でも、破壊力は出ないようにセーフティーロックしてあるから、安心してね。」
セスタス「ルビーは火、サファイアは水、エメラルドは風という認識でよろしいですわね。」
アルスマグナ「イッツロジカル!!」
リディ「ありがと!!これ、おみやげ。」
リディは二人に1つずつダイヤを渡す。
アルスマグナ「ワォ!!」
オーガニクス「貴様…ダイヤペンも作れというのか…ッ!!」
リディ「いやいや、ただのお礼だから。何に使ってもいいよ。」
アルスマグナ「そうよね。ダイヤで作ったペンなんて、論理的に考えて危険過ぎるわ。」
オーガニクス「そうか~、それはそれでズァンネンだ。」
リディ「じゃあね~」
オーガニクス「おう、いたずらするなよ~」
アルスマグナ「あんたが言うの!!?
セスタス   貴女が言いますの!!?」

セスタス「それで、これを使ってどうしますの?」
リディに連れられるがまま、セスタスは酒場の外に
来ていた。
リディ「今回は、この緑(エメラルド)のペンを使うよ!!」
そう言うと、肩掛けバッグから、瓶を取り出した。
中には、風の魔石の欠片が詰まっていた。
次に、1枚の紙を取り出す。
少し紫がかった紙だった。
魔力洋紙(トレースドペーパー)と呼ばれるその紙は、術式を感知すると、その術式を写生する性質を持っている、魔界の子供たちの教材である。
この紙自体で術式を作動させる効果は持っていないため、親の目がなくても安心して使える、便利アイテムだ。
それを、セスタスの魔剣にピタリと貼りつけ、軽量化術式を写生する。
セスタス「まさか、そのペンで、魔力洋紙の術式を…」
リディ「さっすが!!理解が早い!!」
魔力洋紙に写った術式を、緑のペンで風の魔石の欠片に書き写す。
リディ「できたッ!!」
リディが風の魔石の欠片から手を離すと、それはうっすらと発光しながら宙に浮いた。
セスタス「まあ!!綺麗ですわ!!」
リディ「ちっちっち、綺麗なだけだったらやらないんだなぁ。」
セスタス「ふぇ!!?」
リディはその浮遊する石を掴むと、えい、と酒場の壁に向かって投げる。
すると、リディの力では到底出ない猛スピードで壁に飛んで行き、砕け散った。
セスタス「わわわ」
リディ「へっへっへ」
リディは"ザ・悪ガキ"な笑みを浮かべる。
セスタス「野蛮ですわね。綺麗ならそれでいいではないですの!!?」
リディ「へー、魔物をほふる魔剣であるセスタスちゃんが言うんだ~」
セスタス「ぐぬぅ…。」
リディ「それでは、キノコリオン撃退作戦にしゅっぱーつ!!」
セスタス「ふぇ!!?そんな勝手な…。」
リディ「だいじょぶ。ちょうど困っているひとがいるから。」

リディ「おばさーん!!」
おばさん「あら、リディちゃん。今日はお友だちも一緒?」
リディ「うん!!」
リーマの外れにある小さな畑。
そこで日々、手伝いや暇潰しをして野菜を分けてもらっている。
おばさん「でも、今はちょっとあぶないから、リディちゃんじゃなくてマスターくんに頼みたいことがあるのよ。」
リディ「しってるよ。ちびキノコリオンが作物を荒らしてるんでしょ?」
おばさん「そうなのよ。あのまま常習的にこられちゃたまったもんじゃないから、お願いしといてもらえないかしら。」
リディ「へへーん、今日はね、リディちゃんの秘密兵器があるからだいじょぶなんだよ!!」
セスタス「えー、ちびとは言えど魔物ですわよ?」
リディ「へーきへーき!!」
おばさん「平気じゃないわよ。酒場に戻って、マスターくんに伝えてきて頂戴。」
リディ「むぅ~」
おばさん「日が暮れる前に帰りなさいよ。」
おばさんはリーマに帰るようだ。
セスタス「では、帰りますわよ。せんせいが先に帰ってきたら心配しますわ。」
リディ「張り込むよ」
セスタス「だから…」
リディ「やるったらやるの!!」
セスタス「もう…でも、夕方になったら引っ張りますわよ。」
リディ「その時はその時」
セスタス「!!」
セスタスはリディの手を引く。
リディ「ちょっと、早くない!!?」
セスタス「しー、ちびキノコリオンが来ましたわよ。おばさまが離れるのを待っていたんですわ。」
ちいさなキノコリオンは三体来ていた。
畑の土にカサを叩きつけて、根菜類を掘っている。
ちび1「さっさとするノコ!!ババアに見つかったら大変ノコ!!」
ちび2「わかってるノコ!!口じゃなくて頭を動かすノコ!!」
ちび3「おい、お前のカサ俺に当たってるノコ。もう少し距離を考えろノコ。」
リディ「キノコが野菜を食い荒らしているって異様な光景だね…。」
セスタス「ここは魔界ですわよ。普通なんて何処にも在りませんわ。」
リディ「突っ込むだけ無駄だね…。さっさと追い払っちゃおう。」
リディは緑のペンを使って浮遊石を作り、大きく振りかぶって投げつけた。
ちび2「ノコォ!!?」
リディ「やった!!」
ちびキノコリオンのうちの一体に命中し、軽く吹き飛ばした上に、切り傷までつけた。
ちび1、3「アレキサンダーぁぁぁあああ!!」
ちび2「ぐう…アテム…プトレマイオス…すまねぇ…。ぐふっ」
リディ「なんか三文芝居やってるから、今のうち!!」
リディは次々と浮遊石を作り、投げた。
ちび1「ぐわぁぁあああ!!」
ちび3「ぎゃんっ!!」
リディ「やりぃー!!」
セスタス「ふぇ…リディさん、うしろ、うしろ…。」
リディ「へ?」
セスタスに服の裾を引っ張られて後ろを振り返ると、大きなキノコリオンが立っていた。
キノコリオン「よくも、うちのアテムとアレキサンダープトレマイオスをいじめてくれたな…ノコッ!!」
リディ「ふえぇ…。」
セスタス「どうしましょう…。」
キノコリオンの大きな影が落ちる。
キノコリオン「くらえノコ!!目からビーム!!」
二人「きゃあーーー!!」
二人が叫ぶと、キノコリオンに謎の弾丸が直撃した。
キノコリオン「誰だノコッ!!」
アルスマグナ「間に合ったわね。ま、計算通りだけど。」
オーガニクス「無事かい?ザ・か弱き乙女どもよ!!」
セスタス「アルスマグナさん…オーガニクスさん…。」
アルスマグナとオーガニクスの手には大きめな銃のようなものが握られていた。
本来撃鉄がある部分にレバーがついていて、それを下げると上の蓋が開く。
緑の円盤を入れて、レバーを上に戻したあと、引き金を引くと、緑の円盤が空気を切り裂きながらキノコリオンに向かって飛んで行く。
仕組みを言うと、蓋の裏側にはエメラルドで作られた術式スタンプがあって、それが円盤状に加工された風の魔石に印される。
そして、トリガーを引くと、強浮遊石と化した風の魔石に、ダイヤとルビーを練り込んで作ったピックが当たる構造になっていて、その強力な火の魔力に反発を起こした強浮遊石は、とんでもない速さでスッ飛んで行く。
キノコリオン「ノコー!!痛いノコー!!ほんとはビームなんて出せないノコ!!調子乗ったノコ!!許してノコー!!」
たくさんの切り傷を負ったキノコリオンたちは、走って森へと消えていった。

マスター「君たちに質問があります。」
リディ「はい。」
マスター「なぜ、俺が帰ってくるまで待てなかったのでしょうか。」
オーガニクス「おもしろかったからです」
アルスマグナはオーガニクスの手の甲をつねる。
マスター「なんであれ、リディや他の奴等を危険にさらしていい理由なんて無いだろ?違うか?」
セスタス「ごめんなさいですわ…。」
アルスマグナ「私も調子にのり過ぎたわ。ごめんなさい。」
リディ「ごめんなさい…。」
マスター「あと、この変な銃のようなものなんだけど、没収な。普通に兵器だから、クランベリーさんのところへ持っていく。」
オーガニクス「えぇ~」
マスター「おいっ、俺がどれだけ心配したと思ってるんだ!!今回ばかりはちゃんと反省してくれなくちゃ困る。」
オーガニクス「私の心配もしてくれたのか?」
マスター「あたりまえじゃないか。仲間なんだから。」
オーガニクス「面目無い…。」
マスター「リディ」
リディ「ふえっ!!?」
マスター「お前はお前の出来ることで頑張ればいい。俺だって、俺の出来ることで頑張ってるんだから。」
マスターはリディを抱き寄せる。
マスター「困ってるおばさんを助けてあげたかったんだろ?」
リディ「うん…。」
マスター「なら、なおさら俺に言ってくれなくちゃ困る。リディが怪我なんてしたら、おばさんリディの心配までするからさ。」
リディ「うん……」
マスター「それと、セスタス」
セスタス「は、はいっ」
マスター「リディを止めようとしてくれてたんだろ。ありがとな。」
セスタス「そ、そんな、お礼を言われるような事はしていませんわ。」
マスター「いたずらっ子の魔剣も多いから、俺が居ないとき、止めてくれるか?」
セスタス「とーぜんですわ!!せんせいの命令なら、やってのけますのよ!!」
マスター「それじゃ、魔力補給(メシ)にするか。つかれたろ?」
四人「はーい!!」

おしまい